サンガンピュールの物語(お菓子の国)EL-エピローグ- 次の土曜日、「お菓子の国」は無事開催にこぎつけることができたのだった。足立区綾瀬の会場には事件解決に携わったK、サンガンピュールの両名、そして親友の真の姿を知った岩本あずみもいた。 「へえー、ほんとにいろんなお店があるんだね、すごいよ、この数は」 あずみは驚いた様子だった。これに対してサンガンピュールは、 「そうだよね、これが先週の時点でどんな状態だったと思う?」 と思い出話をしようとした。 「すごく気まずい雰囲気だったんだ」 サンガンピュールがそう言ったところ、Kが止めた。 「待て!その話はもうやめとけ」 「えっ、なんで?」 「せっかくみんなが協力して今日という日を迎えたのに、けんかしてた頃のことを思い出させるのかい?そういう訳にはいかないだろ?」 Kの指摘は尤もだった。 「おっ、サンガンピュールさん!Kさん!こっちですよ!」 後ろから自分たちを呼ぶ声が聞こえた。 「ん?この声は・・・?」 サンガンピュールはすぐには分からなかったが、Kにはすぐ分かった。 「世良田さんじゃないですか!」 「サンガンピュールさん、それにKさん、どうもこんにちは。つい先日までご迷惑とご心配をお掛けしてすみませんでした」 「いいですよ、終わり良ければ全て良しですから」 2人で談笑している中、世良田はあずみの姿に気付いた。 「あれ?サンガンピュールさん、お友達の方ですか?」 「えっ・・・、はい、そうです」 事情を全く知らないあずみは 「このおじさん、誰?」 と言った。すかさずサンガンピュールが 「『お菓子の国』実行委員会の幹部の人だよ」 と答えた。このやりとりに世良田本人はあまり気にしていなかった。 「サンガンピュールさん、この前は大変でしたね」 「・・・・・・」 この言い方に少しカチンときた。 「自分の苦労を知らないくせに、よくそんな偉そうな口が言えたものね」 心の中でそうつぶやいた。そのしかめっ面の表情のサンガンピュールに気付いたKが一言。 「まあ、まあ、ここは笑顔、笑顔!事件は解決したんだし!」 何とか取り繕ってその場を明るく演出した。 「まあ、とにかく僕達は僕達で頑張っていますので」 「そうですか、それは良かったですね。これからのご活躍を期待しています」 「ええ、そちらこそ!」 そう言い残して世良田は去って行った。 お菓子の国のメンバーはと言うと、青木と北条は互いの実力を認めるライバルとして良い関係を築いていた。けんかの仲裁役だった秋本、三角はムードメーカーとしてお菓子の国を引っ張る存在になっていた。解放された元人質の5人も元気そうで何よりだった。 そしてこのイベントは多くの来場客で賑わった。土曜・日曜の2日間で約6万人の集客に成功した。去年より3倍増だった。これにて一件落着である。 世間では、2大政党政治の確立が問われた衆議院総選挙があまり盛り上がらずに終わり、街中を走っていたうるさい選挙カーの音も消えて、いつもの日常が戻った。時期は11月中旬、ひかり中学校ではもうすぐ2学期の期末テストに向けて準備する季節が始まっていた。 サンガンピュールの物語(お菓子の国のチキンレース)・完 ジャンル別一覧
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